プレス加工とその他の加工方法の違い

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金属の加工方法1つであるプレス加工は、自動車、スマートフォン、アルミ缶など私たちの身の回りにある金属部品の大量生産に最も適した加工です。ただプレス加工にはいくつかの種類があり、メリットもデメリットもあることから、「自社が求める部品にプレス加工が最も適しているのか」、「どんなプレス加工メーカーに依頼すべきなのか」を見極める必要があります。そこで、4つの解説を行います。

プレス加工について

プレス加工の依頼を出す場合、どの工場がどのような加工を手掛けてきたか、どのような製造法を得意としているかを知ることが重要になります。

鋼や銅、アルミニウムなどの鋼板に、金型を非常に大きな力で押し当てることによって、鋼板を変形させるプレス加工では、製造したい部品に応じたプレス機械が必要です。

自動車のボンネットなどのような大型のものだと、数千トン以上の大きな力が必要な大型プレス機が使われます。また、半導体パッケージの内部配線として使われるリードフレームなどでは、超精密なプレス機が必要になります。このように、製造したいものの大きさと、加工工場の持っているプレス機の相性の問題が一つあります。

さらに重要な要素が金型です。自動車部品などを加工する場合は、大型のものやプレス加工しづらい材料の部品などが多く、スマートフォンなどに搭載されるような精密な部品であれば数ミクロン単位(1μは0.001㎜)のものがメインになる場合が多くなります。

このように、プレス加工を行う企業が持っている設備を把握することが、良い製品を製造する重要なファクターとなります。

プレス加工の種類

また、プレス加工は目的によって加工方法が異なります。代表的なものだと、せん断、曲げ、絞り加工などがあります。以下にそれぞれの特徴を紹介します。

せん断加工
パンチ(雄型)とダイ(雌型)と呼ばれる金型を用いて、鋼板などの板材を切断、分離したり、打ち抜いたりする方法です。自動車や精密機械の構成部品に使われるものが多くあります。

曲げ加工
金型を使い、鋼板をVやU、L字型などの任意の形状に曲げる加工です。自動車のボディなども曲げ加工の一種で、プレス加工で代表的なものです。

絞り加工
鋼板をパンチとダイの間に挟み込んで、圧縮力や引張り力を加えながら、パンチやダイの形状に沿って容器のようなものを作る加工方法です。1枚の鋼板を伸ばして加工するため、溶接などが不要で、液漏れなども防げることから、電池ケースなどが代表的です。

金型の種類

製造する部品や生産性などによって必要な金型も異なります。主にプレス金型には3つの種類あります。

単発型
最もシンプルな金型構造で、1回のプレスでせん断、曲げなど1つの機能のみを行います。金型の構造もいたって簡単なので、製作費用も安く済み、単純な形状や小ロットの部品に適しています。

トランスファー型
異なる工程の単発型を複数並べ、自動で鋼板を移動させていく搬送機構を持ちます。順送に比べ歩留まりもよいのもメリットです。また、単発型の集まりなので、大きく形を変えていく必要のある部品などに適しています。

順送型
1つの金型で曲げ、絞り、せん断などを行います。複数の工程を一つの金型で行うので、工程集約が図れます。一方で、複数の工程を1つの金型で行うので、金型は比較的大きく、複雑にもなるので、高価にもなります。鋼板を少しずつ、金型の中に順に送っていくため、順送金型と呼ばれます。

メリットとデメリットは?

プレス加工のメリットは何といってもその量産性の良さにあります。一度金型を作ってしまえば、金型とプレス機械が壊れるまで延々と部品を製造することができます。何十万、何千万個と同じ形状の部品を作るには最適な加工方法です。コストも大きな魅力です。例えば、金型費が1000万円でも、1000万個作れば1個たったの1円でできるわけです(プレス機や材料費は別)。また、金型を作り、プレス機の条件設定さえすれば、機械が自動で生産するので、職人技も不要で、高品位な部品を安定生産できることも大きな魅力です。

一方でデメリットの1つは、初期投資のコストの高さです。大型プレス機では数億円の設備投資が必要ですし、金型も高額なものでは数千万円ということもあります。また、要求される高精度な金型を作ったり、早いサイクルでプレスできたりする金型を作り込むのに、数カ月以上要することもあるため、立ち上げまで時間が掛かることもデメリットと言えるでしょう。

また、ランニングコストでも考慮が必要です。大きな初期投資に対し、長い間プレス加工を行い大量生産できれば、時間もコストも回収できますが、製品のライフサイクルが早かったり、急遽生産中止になったりした場合には、その投資が無駄になる可能性もゼロではありません。

その他の金属加工との違いは

プレス加工はあくまで金属加工の一種であり、他にも様々な加工があります。求める部品によって適した金属加工があります。その一例を紹介します。

板金加工

金属の鋼板(ステンレス・鉄・真鍮・アルミ・銅など)に色んな形状の穴をあけたり、切断したり、折り、曲げなどを行います。プレスの曲げ加工と重複する部分はありますが、人の手による作業や、板金加工機使ってもプレス加工のような特別な金型が必要ないので、小ロット生産や受注生産に適しています。

ヘラ絞り加工

平面の板状円形の【鉄やステンレス鋼】の金属板を回転させながら【へら】と呼ばれる棒を押し当てて少しずつ変形させる塑性加工です。

絞りスピニング加工、【へら押し】とも呼ばれています。 回転させながら加工するスピニング機で加工し板厚を一定にしながら変形させる絞り加工の一種です。

プレス加工では雄型と雌型を必要とするのに対し、雄型のみで加工を行うことが可能【多品種少量生産】に最適です。熟練の技によりプレス加工よりも高い厚み精度を実現することが可能です。

また同じ径で高さ違いの加工物が必要な場合、金型一つで加工が可能なので金型費をプレス加工に比べてコスト削減が見込めます。

デメリット

一つずつの加工となるので製作に時間がかかる


ヘラ絞り加工 会社紹介

ヘラ絞り加工

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切削加工

マシニングセンタやNC旋盤などの工作機械で、切削工具を使い、金属の塊を超硬チップで削り出して製品にする加工方法です。プレス加工に比べ、加工の自由度は高くなりますが、一品ずつ加工していくため、量産性の面では劣ります。また、プレス加工で成形した部品を切削加工し、最終製品に仕上げていくことあります。

鋳造

金型を使って金属の造形方法の1つです。高温に溶けたアルミニウムなどを金型に流し込み、冷やすことで任意の形状を作ります。造形の自由度の高さと、大きなものに対応できるのが特徴です。なかでも、金型に流し込んだ後、圧力を加えたものをダイカストと呼びます。高い寸法精度が得られ、薄肉で複雑な形状が作れるため、エンジンやトランスミッションなどに適しています。ちなみに、エンジンブロックなどはダイカストで造形後、切削加工を行い、最終部品に仕上げていきます。

板金加工の依頼時の注意ポイント

  • 加工個数の把握(量産の場合プレス加工10万個以上〜or少量の場合ヘラ絞り加工10万個以下〜)
  • 予算の把握 (プレス金型の場合金額が高騰するし取替が必要となりその度に費用が発生するorヘラ絞り 金型1つ製作で半永久的に使える
  • 形状が四角となるとレーザー加工や曲げ加工になり丸物だとヘラ絞り加工
  • 加工物の厚みを把握する(製品の強度問題と製品の使用場所を把握する)

加工を依頼する上で、加工個数の把握と形状、厚みを把握しそれに見合った加工方法を選択することで加工コスト削減が見込めます。

それぞれの形態によって、コストや納期、サポート体制が異なりますので、自社の状況なども踏まえて見極める必要があります。

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