プレス加工の変わりとなる加工

プレス加工費コスト削減!?

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  • 塑性加工とプレス加工の違いについて
  • ・プレス加工は金型コストが高い
  • ・一つの金型で類似の様々な形で生産したい
  • ・少量生産でプレス加工のコスト採算が合わない
  • 塑性加工とプレス加工の違いについて
  • プレス加工以外の加工方法が可能なのか?
  • ヘラ絞りの機械加工について

以上の内容で困った経験がある方が多く居られると思います。この記事はそんな方々に向けた記事となっています。

ヘラ絞り加工とプレス加工の違いについて

金属加工では「プレス加工」や「曲げ加工」など多種多様な加工方法があり、製品を押したり曲げたりして金属を加工して製品にしていきますが、その中でも「へら絞り」というものがあります。円形の金属板をへらで押しながら成形して加工する方法で、この記事では「へら絞り」にどのような特徴があるのか、どのような製品で使われる加工方法なのかを中心に解説していきます。

へら絞りとは

金属は「伸ばす」「押す」「切断する」などの工程で製品の形を作っていきます。このなかで金属を伸ばして加工する方法が「へら絞り」です。

へら絞りの仕組み

「へら」と呼ばれる棒状の道具を使い、旋盤のような機械に金属を取り付け、回転する金属にへらを押しあてて変形させながら製品を目的の形にしていきます。弊社ではスピニングの機械を使いへらを「てこの原理」で金属に押しあてて、鉄やステンレス鋼、真鍮、銅の材料を変形させています。金属を回転させながら加工するので「スピニング加工」とも呼ばれます。

へら絞りは、回転させた金属を押して絞りながら変形させていくので、タンブラーや照明器具のような半円の製品を作ることが可能です。直径10φ〜100φまで、厚みは0.6〜3.0tぐらいまで絞れるので、照明器具のように浅く絞った製品から、ミルクポットのような深く絞った製品まで加工できます。

絞り方にしても、中心部のみ変形させることや、全体を絞って変形させることもできます。

へら絞りの特徴とは

へら絞りの特徴として、以下の点が挙げられます。

・プレス加工とは違い雌型の金型がいらず雄型1つで金属加工できる
・板加工の1つで製品の軽量化、コスト削減を実現
・加工表面はなめらかで均一
・熟練のティーチングデータ(手絞り)を機械に覚えさせ小ロットから大量生産まで対応できる
・他の溶接や研磨、真空処理と組み合わせ複雑に製造可能

へら絞り加工の技術を使って作られる主なものは、調理器具や産業用部品、研究用部品、自動車部品、バイク部品、パラボラアンテナ、シンバル、タンブラー、椅子など挙げられます。また最近ではアウトドア製品でステンレス製の燻製器やランタン部品と多種多様な製品の製造が可能です。

そもそもへら絞り加工の歴史は古く、中世ヨーロッパ時代では手動、つまり人の手でへらを操作して加工するるところから始まり少しの力加減で金属が大きく変形するため目的の形にするには微調整を繰り返しながら加工する必要があり熟練の技術が求められました。

現在は、スピニングなどの機械加工道具の発達によって、自動絞り機(スピニング)も登場しています。

プレス加工との違い

プレス加工は金属板を回さず金属を押して変形させていきます。へら絞りと似ていますが、プレス加工では「雄型」と「雌型」の2つの金型を必要とするのに対し、へら絞りは雄型1つで加工できるという違いがあります。

また、プレス加工は製品1つに対して専用の金型が必要ですが、へら絞りは簡単な金型が1つあれば様々な形状の加工が行えます。よってプレス加工に比べれば、へら絞りならコストを10分の1程度まで抑えることができます。

しかし量産と言っても、へら絞りは数万までが限界で数十万と作るような大量生産には向いていません。特に手動でのへら絞りは加工する職人の技術によって出来映えが変わり、製品の精度の差が大きく異なります。同じ職人が複数の金属をへら絞りするにしても、すべての製品を同じ精度に仕上げるのは至難の技です。

しかし弊社では専用のスピニング機を5台所有しており、ティーチングという熟練の職人による手絞りのデータを機械に読み込ませる手段を取ることによって精度の差をなくし量産でき安定した製品を供給することに成功しました。

よってフライパンや鍋など1つの製品を大量生産する場合はプレス加工、シンバルやパラボラアンテナのような少量の品の生産ではへら絞りが向いているといえます。

へら絞りのメリット・デメリット

へら絞りのメリット

初期投資が安く短納期

プレス加工では雄型と雌型と2つの金型が必要です。そのため、どのような製品を作る場合でも初期投資が高くなります。また2つの金型が合体するようにクリアランスの調整をしながら精密に作る必要があるため、設計図から金型製作、金型組み立て、プレス加工まで必要となり、早くても10日程度の納期がかかるのです。

へら絞りの場合、金型がシンプルで雄型のみで金属加工ができ初期投資が安く、納期は複雑な形状でも1週間程度です。簡単な形状であれば、その日のうちに加工品を作り上げることも可能です。

その為、プレス加工より試作品など作ってみて形状を変化することにも適しています。

へら絞りのデメリット

大量生産には向かない

へら絞りで加工するときは、1つずつの生産となり金属の円盤板を機械にセットします。手動でも自動でも1回ずつセットしないとならないため、大量生産にはあまり向かない加工方法です。

へら絞りが用いられる主な製品

へら絞りでは、ステンレス鋼、アルミ、鉄、真鍮、さらにチタンなど硬い金属などの金属までも製品に加工することができます。製品の形状も、照明器具のような半円形の製品や筒型、楕円形など、多種多様なものがあります。

調理器具

タンブラーや鍋、フライパンなどはそれほど深い絞りは必要としないため、へら絞りの得意分野です。調理器具であれば素材は主に鉄やアルミの金属を製造・加工することになります。へら絞りで加工した後は、取っ手などを溶接して取り付ける製品もあります。

建築金物

建築金物としては、フィルターやカバー、シェードなど様々です。建築金物は複雑な形状の製品が多いのですが、「両端を絞る」「真ん中だけ絞る」「先端を球形にする」など多くの形状に対応できるへら絞りでの加工が可能です。

産業用部品

スプロールやホッパー、プーリーなど、機械加工マシンの部品もへら絞りで作ることが可能です。また、パラボラアンテナや新幹線の先端部分、ロケットの先端部分などの大型製品もへら加工で作られています。新幹線やロケットの部品を作るためには、へら絞りはなくてはならない技術となっています。

優れた製品をつくる「へら絞り」

昔は手絞りの加工技術であるへら絞りでしたが、現在は機械での自動化が進んで機械の機能や職人の技術がどんどん上がっているため、厚さや品質、精度が安定していなかった製品も、へら絞りで年々加工ができるようになっています。

また、へら絞りなら製品の強度を高くすることができる上に軽量化も可能なため、品質面でとても優れた製品が完成するのです。

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